第2回:PCR検査に思う

感度50%とは、実際に陽性の人を正しく陽性と判定することが出来るのが50%、特異度の方は実際に陰性の人を正しく陰性と判定することが出来るのが99%ということである。表1では、何らかの事情があってPCRに踏み切る人の2人に1人が実際のところ陽性の人であるという仮定でのダミーの数字である。見て頂くとわかる通り、2人に1人が実際に陽性という状況での感度50%、特異度99%というのは、仮に「陰性」と判定されたとしても実際にはコロナ陽性である可能性が33.6%もあることに他ならない。これがメディアで報じられているところの「コロナ検査をして陰性であったとしても免罪符にはならない」という意味合いである。

表1 感度50%、特異度99%、検査者の有病率50%

実際は+ 実際は- 有病率
検査で+ 500 10 510 98.0%
検査で- 500 990 1,490 33.6%
1,000 1,000 2,000 50.0%


ただ、実際のところ「検査する人のうちどのくらいがコロナ陽性なのか」についてはあまり具体的な数字がメディアには出てこない。10月5日に世界保健機構(WHO)のライアン氏は「世界人口の約10%が感染した可能性がある」と述べたそうなので、これを拠り所にして感度50%、特異度99%のサンプルを変更したのが表2である。

表2 感度50%、特異度99%、検査者の有病率10%

実際は+ 実際は- 有病率
検査で+ 500 90 590 84.7%
検査で- 500 8,910 9,410 5.3%
1,000 9,000 10,000 10.0%


検査で陽性と判定された人は84.7%が、陰性と判定された人であっても5.3%が実際にはコロナ陽性ということになる。もちろん、PCR検査陽性とコロナによる感染症罹患とは同一概念ではなく、また、私のように検査を受けざるを得なかった人たちと世界全体と有病率が同じでは無さそうであるし、そもそも日本ではもう少し有病率は小さいようにも肌感覚としては感じられるのではあるが。

ところで、どうしてこうした検査の精度、指標が一本化できないのかという話に立ち返ってみると、一般的には白黒を判定するのは「当たっているのかどうか」にしか興味が湧かないのであるからして、シンプルに的中率でとらえた方がよいという考えの人もいるかもしれない。つまり表1であれば陽性の人を陽性とした500人と、陰性の人を陰性とした990人の合計1490人が全体2000人の中で正しく的中しているので1490÷2000=74.5%の的中、表2であれば同様にして(500人+9410人)÷10000人=99.1%。シンプルである

しかしながらクジ引きのように的中率を計算できない事情があって、この事情を理解して頂くための参考として用意したサンプルが表3、表4である。診断の分野ではコロナに限らずこのように検査を受ける人のわずか1%であるとか、0.01%つまり1万人に1人しかいないような病気もあるわけで、こうなってくると「的中率優先」にしてしまうと「全員が陰性です」としても99.99%が的中することになってしまう。これでは検査をする意味がまるでない。こうした事情から仕方なしに感度、特異度などが指標として採用されているわけである。

表3 感度50%、特異度99%、検査者の有病率1%

実際は+ 実際は- 有病率
検査で+ 500 990 1,490 33.6%
検査で- 500 98,010 98,510 0.5%
1,000 99,000 100,000 1.0%

 

表4 感度50%、特異度99%、検査者の有病率0.01%

実際は+ 実際は- 有病率
検査で+ 500 99,990 100,490 0.50%
検査で- 500 9,899.010 9,899,510 0.01%
1,000 9,999,000 10,000,000 0.01%


なお、疫学分野でもっとも重要視、重宝されている指標は(もちろん時と場合によるのだが)、陽性的中度である。表中でいえば「有病率」の上の方、つまり表1ならば98.0%、表2ならば84.7%がそれで、勘の良い方はお気づきだと思うが、陰性的中度というのもあり、こちらは「陰性を的中」させている方なので有病していない方が的中、つまり表1ならば(100%-33.6%=)66.4%、表2ならば(100%-5.3%=)94.7%となる。

また、表3、表4を違う視点で眺めて頂くと「陽性と診断されても実際に陽性であるかははなはだ怪しい」ことが見てとれるだろう。特に1万人に1人のような稀な病気の診断では陽性と診断されたとしても実際に陽性であるのは0.5%、つまり99.5%は陰性であるということもあり、それはとりもなおさず診断科学の限界でもあるのだが、そうとは知らず「稀な病気の診断で陽性になってしまった」ということで大いにショックを受けてしまう人はかなり多くいらっしゃるに違いない。この精神的ショックは全く無益でしかも検査する側が適切にコミュニケーションすれば防げるものだ。これを何とかしたい。